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ただし、すごく短いうえに、年齢制限は実質ありません。キスまで。
私にしては禁欲的。(爆)
ですので、その分コピー本を作って発散したいと思います。(蹴殴)
私なんぞの作文を読んでやっても良いよとおっしゃる奇特な方は「つづきはこちら」からどうぞ。
何だか、最近変だと思う。
陽介の顔を見るときに、口に目が行く。
さくら色の、割とケアも行き届いたくちびるは、可愛いと言えなくもない、と思った時点で、悠は自分の心に生まれた不可解な感情に驚いていた。
触れたらどんなだろう。
気持ち良いだろうか。
そんなことを考えて、悠は少しだけ顔を紅潮させた。
「…棒、…相棒?」
気が付くと後ろから呼ばれていた。しかも少し焦っているような口調で。悠は振り返り、
「どうかした?」
と尋ねた。陽介はマズイという表情で後ろを指さす。
「珍しいわねえ、鳴上くん」
柏木先生が笑顔を浮かべながら鳴上の席に近づく。
「はい?」
慌てて席から立ち上がる。濃い化粧の匂いが鼻を衝く。大きく胸の空いたブラウスから見える谷間は、女性特有の色気に満ちすぎていて、かえって教室にそぐわない気がした。
「授業、上の空だったでしょ?黒板の問題、解いてくれるかしら?」
ちょうど良い気分転換になる。悠は立ち上がり、チョークを取るとカツカツと勢いよく答えを書き込んだ。柏木先生は残念そうに、
「そう、その通りよ、鳴上くん。先生の授業なんか聞かなくても解るのかもしれないけど、一応ちゃんと聞いてね~」
とウインクした。未だに性的なフェロモンが高校生に魅力的に映るのだと思っているのかもしれない。少なくとも自分にとっては陽介以上に魅かれることはないだろう。
「すみません」
悠は反省したように、少し力を落とした。確かに話を聞いていなかったのは間違いないからだ。しかも、陽介のことを考えて。
重症だ。
席に戻った悠に背中から声がかかる。
「お疲れ。さすがだな、相棒」
「サンキュ、陽介」
陽介は本当に悠のことをすごいと言っているかのように、感心した口調で言った。悠は陽介の笑顔を見て、やっぱり可愛いと思いながら、どうしたらいいか考えていた。
その昼休み。
「うわ、これ、おまえが作ったの?」
「うん、一緒に食べよう」
屋上で陽介に肉じゃが弁当をふるまった。
「うめー、すげー、おまえ、料理うめえな」
「そうか?初めて作ったんだけど」
「マジで?天才じゃん」
陽介は嬉しそうに肉じゃがをパクついた。陽介の嬉しそうな様子を見ていると、悠は嬉しくなる。だが、自然に陽介の唇に目が行ってしまう。食べ物の香りとしっとり濡れた唇に、目が釘付けになり、悠はあわてて首をぶんぶんと振った。
笑顔を取り繕って陽介に
「じゃ、また作ってこようかな」
と言った。途端に陽介は破顔一笑。
「マジで?嬉しいけど、何かわりいな。俺、料理しないし、お返しできないぜ?」
嬉しそうな陽介の顔を見ているうちに、悠の心の中に、一つの考えが浮かんだ。
欲望のままに。迷いなく。
「じゃ、キスをください」
「は?」
突然の悠の言葉に陽介はでかい声で疑問符を投げつけた。
「なんでそうなるんだよ?」
「だって、ビストロ○マップとかでもやってるし」
「あれは、女優さんとかだろうが」
「そうだっけ?ホッペに、でいいんだけど」
最初は冗談だろ?という顔で聞いていた陽介だったが、どうやら悠が本気だという事に気が付いた。
真剣な顔で答える。
「マジで言ってるんだな?じゃ、拒否る」
悠は陽介の言葉に、挑発するかのように、
「そっか、残念だな。なら次の弁当は里中か天城と食べるか」
と言った。陽介は一瞬とほほ顔になったが、
「とにかく、好きでもないヤツにキスなんてしねえかんな」
と言い放つ。悠は、
「好きじゃないの?俺のこと」
と尋ねる。陽介は噴火した。
「何言ってんだよ?相棒だろ!俺にとっておまえはかけがえのない存在だって」
陽介がまくしたてるのを、悠はまぶしい顔で見ていた。一応突っ込みを入れてみる。
「キスくらい、減るもんじゃないし」
「減るの!ファーストキスは好きな女の子と…」
と言いかけて、陽介は顔を真っ赤にする。
可愛い。
何だろう、この可愛い生き物。
触れたい。
自分の中に生まれた衝動に、悠は従った。
「じゃあ、逆でもいいな」
悠は立ち上がる。そして、無防備な陽介の顎を捉えてその頬に軽く唇で触れた。
「はああああっ?」
悠に口づけられた頬を陽介は手で押さえて飛び上がった。
「おまえ、絶対おかしいって」
「そう?」
悠は陽介の頬の感触を唇でそっと確認できたことに、喜びを感じている自分に驚いていた。
つまり、そういうこと、なのか?
しかし。
「弁当はごちそうさん。でも、少し頭冷やせよ、相棒」
陽介はまるで熟れたトマトのように真っ赤になって、頬を抑えたまま屋上から走り去ってしまった。
後に残された悠は、独りで溜息をついた。
自分の気持ちに気が付いてしまったからだ。