Y2 冬コミ新刊「Dreaming」サンプル 忍者ブログ
テレビアニメペルソナ4第12話「It’s Not Empty At All」を見て、悠と陽介に腐ってしまいました。そんなネタでお送りします。BL要素がありますので、お嫌な方は入室しないでくださいね。
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えっと、ファーストキスまでの部分をアップします。(爆)二人とも恋愛については初心者っぽいので、難儀な感じですが…。生暖かい目で見守ってください。


「その、何でこれなんだ?」
 悠に尋ねる陽介の表情は、正直困惑に満ちていた。
「うん、何か、自分みたいで」
「?」
悠の言葉に陽介は首をかしげる。
 二人が今目の前にしているのは、速水御舟の炎舞という絵が載っている画集。黒い背景に浮かび上がる真っ赤な炎の中に、色とりどりの蛾が舞っている。
 その情景は、陽介には不気味に思えた。
 まず、そもそも、虫があまり好きじゃない。特に蛾とか蝶とか、鱗粉跳び散らかしている虫。あと、ぶよぶよした身体の虫もいやだ。気持ちが悪い。
 けど、そんなこと、悠の前ではかっこ悪くて言えやしない。だけど、悠は陽介の気持ちには気付かぬまま。
「うん、何か、魅かれた」
「そうなんか?」
悠は、しっかりとその絵を見つめている。その表情は真剣そのものだ。
陽介はそんな悠の横顔を見つめた。
「おかしい?」
いつの間にか、悠の顔が自分を見つめていることに気付いて、陽介はあわてて
「いや、俺の趣味じゃないかな、ってだけ」
と言い訳する。
「そっか」
悠はあまり意に介さない様子で、
「なら、陽介の課題はどうする?」
 陽介に尋ねてくる。
「うー…」
陽介は困ってしまう。
「じゃ、せめて、人物画か風景画、どっちかに絞らないか?このままじゃだめだろ」
悠のいう事はもっともだ。だが、陽介はそもそも日本画そのものにあまり興味がなかった。だが、今回の現国のレポートは、日本画限定で、その作者のおいたちを調べ、感想を書くことになっている。しかもあと三日しか締切まで日にちがない。
「じゃ、せめて、浮世絵とかにすっかな」
「じゃ、この辺かな」
陽介の言葉に、悠は別の画集を捕まえてくる。
「歌麿?写楽?」
「北斎にするわ、俺」
「じゃあ、有名どころで富嶽三十六景かな」
悠は画集をめくって、そのページを開く。
「この辺は、富士山が必ず入っているとか、働く人や景色の描写が細かいうえに、大胆な構図が特徴的なんだ。レポートを書くのには良いんじゃないか?」
悠の知識の広さに陽介は感心するが、自分のレポートの出来に関係してくるわけで、自分で選ばないといけないと思った。そして、なかなか決められないので悠に迷惑をかけているな、とも感じた。
「俺、これにする」
「良かった、決まって。写楽とかだと、あまり本人の資料がないから書きにくいだろうと思った」
「そっか、良くわかんねえけど」
「それなら、ますます良かった。そういう事考えなくても良いからさ。まず、この資料から少し参考になること書き写して。それから、この絵の特徴である奥行をどうやって出しているのかとか、そういうのはネットでも調べられるから。で最後に感想。これは俺も手伝えないから、自分の気持ちで書いてくれればいいよ」
 悠の博識に頭が下がる。陽介は、
「悠、サンキュ。マジで助かるわ」
 と言って、顔の前で両手を合わせた。
 まるで悠を拝むようなポーズに悠は苦笑する。
「いいって、それより今はまず情報を集めよう」
「オッケー相棒!」
 二人は図書室で手に入る限りの情報を集めた。
 


「えっと、化学染料は当時まだ珍しく…っと。プルシアンブルーって言うのか、この色」
その夜、陽介は家でレポートをまとめ始めた。悠の力をとても頼りにしてしまったが、どうにか、自分の力でレポートを終わらせることができそうだ。
「そうなると、余裕出てきちまうな。悠はどうしてあのキモい絵を選んだんだろう?」
つい悠のことを考えてしまう陽介。
悠の気持ちが解らない。相棒なのに。
面白いかと言われると、絶対面白くない。陽介は悠の気持ちが知りたいと思った。
「でも、直接訊くのもな」
 何だかそれはとても悔しい。陽介は誰よりも悠を理解したいし、相棒としてそばにいたい。その役目は誰にも譲りたくない。
 陽介にとって、悠は特別なのだ。
 それは意識している。
 でも、なんだか、この想いは友人とは違う気もする。元々他人の気持ちにはさといつもりだ。そうじゃないと、ジュネスのバイトを束ねたりするのは困難。だが、悠だけは、一筋縄ではいかないと言うか。
「何せ、あれだけペルソナ持ってるんだ。あれが全部自分だなんて複雑だよな」
 と独り言。自分にはジライヤだけだ。だが、それだって、向き合うのは大変だった。自分の裏の顔みたいな、あっちが本音のような。だが、ジライヤみたいな自分も確かに自分の中にあると自覚できてから、自分はもっと他人の心の動きや、自分の中にある気持ちが解るようになったと思う。
「悠…」
 陽介は、あの絵が悠の気持ちの手がかりになるかもしれないと思った。
「気持ち悪いのに、何であの絵を選んだんだろう」
 陽介の中で、嫌悪感や否定感のほかに、『悠を知りたい』気持ちが膨れ上がってくる。悠はあの絵を気持ち悪いとは思っていないように見えた。陽介はあの時の悠の表情を思い出していた。
「何でこんなに頭悪いんだ、俺?」
 学年トップの悠だから思ったり考えられることであるなら、もしかしたら自分では理解できないかもしれない。だが、できれば自分でちゃんと考えたいと陽介は決心していた。
「何でこんなに悠が気になるんだろう。執着に近いかもしれないぜ」
とため息。
 ただ、同じ、都会からの転校生だから、ゴミバケツにダイブした自分を助けてくれたから。
 そういう理由で声をかけ、近づいたはずなのに。
 悠のすべてに、心底憧れて、魅かれている。それは自覚している。だから、自慢の相棒。
 けれど…。
 今までこんなに他人のこと、特に友人として接してきた相手に、こんな風に特別に考えることはなかった。転校する前はもちろん、転校してからも、上辺だけの付き合いしかない、本当の意味で心を許せる友人はいなかった。悠だけが、出会っていきなり自分のすべてを知ってしまった。引かれると思ったが、逆に悠は自分に近づいてきてくれた。一緒に先輩の殺人事件の謎を解こうと言ってくれた。
陽介は、自分の心の中を占領している、なのに解らない相手、悠を想った。
 まるで、恋?
「いやいやいや、それはないだろ」
 首をちぎれんばかりに横に振る。
 人としてあり得ない。散々完二をからかっておいて、自分が男に惚れるとか、あり得なさすぎる。
 男として、男が男に惚れる状況はない訳ではないことは知っている。熱い友情ものの漫画も読んだことがある。半分バカにしながら、自分はこうならないだろうと思いながら。だから、熱く友情を語れる相手に出会ったんだ。悠はそういう相手なんだ、と思った。
 この気持ちはそういう事だ、と結論。
 だが、そうじゃないだろ?という自分の中にある声もある。
 自分で自分の気持ちがはっきりしなくてイラつく。
 このぐちゃぐちゃした思いは、スッキリと吹っ飛ばしたいと思った。
 陽介は自分のベッドにごろりと寝転がった。
 悠に、殴ってもらおうか。
 目を覚ます意味で。
 ちょっと恥ずかしいけど、恋愛的な意味ではなくて、対等な、熱い青春みたいな本当の友として。それが自分の考える相棒ではないか。
 そして、俺にとって心底すべてを預けられる真の『相棒』の位置を確立したい。
「よし、決めた」
 陽介はガバッと身体を起こし、拳を握りしめていた。明日、言おうと。



「悠、俺を殴ってくれ」
と言いだすと
「は?」
悠は戸惑った顔をした。そりゃそうだろう。自分でも、どういう考えでこうなったのか、上手く説明できないのだから。いろいろぐちゃぐちゃ考えすぎてスッキリしたいから、なんて。でも、陽介は必死だ。
「俺、おまえと対等でいたい。俺の中にあるぐちゃぐちゃしたもの、おまえに吹っ飛ばして欲しいんだ」
何だか、自分で言ってても自分のセリフそのものがぐちゃぐちゃなような。
でも、それが今の自分だから。
今の自分、ありのままの自分を悠に見せて、ジライヤと向き合った時のように、できれば受け止めてほしい。
あれ?
陽介は、自分で言っていて、まだ気持ちが完結していないことに気付いた。
その時。
「一方的に殴るのは、対等じゃない。……殴り合えば対等だ」
と悠が言った。
その瞬間陽介は、真っ暗だった目の前に青空が広がった気持ちになった。いつだってそうだ。悠の一言が自分の心を前向きに変えてくれる。
「そうだな」
陽介は悠の言葉に頷いた。
「手加減なしだぜ?」
「行くぞ」



 悠のパンチがみぞおちに入った時、陽介は強烈な衝撃に気を失いそうになった。手数は自分の方が出しているのに、悠のほうがパンチに威力があるようだ。テレビの中じゃ日本刀どころか、でかい両手剣を振り回している相手だ。体力も腕力も悠のほうが上だろう。これって、殴り合って対等なのか?自分のほうが圧倒的に不利な気がしてきた。
 だが、それも含めて殴り合っているうちに、細かいことは気にならなくなってきた。
 クロスカウンターが両者の頬を捉えたとき、目から本当に火花が出て、もうこれ以上無理、限界、と漠然と思った。と同時に、身体が言う事を聞かず、勝手に鮫川の河原の草むらに倒れこんだ。同時に悠も崩れ落ちるように陽介の隣に寝転んだ。
「…って。おまえ、パンチ重すぎんだよ。お花畑見えたじゃないか」
「俺も相当お前のパンチ食らったけどな」
悠も傷だらけの顔を拭いながら、空を見上げていた。
「サンキュ、悠。おかげで、もやもやしてたのがスッキリしたぜ」
 陽介は笑顔で礼を言った。すると、隣で寝転んでいた悠は手を伸ばしてきた。陽介の手を探ると、手をつないできた。
「?」
 陽介は急に手をつなぐことに困惑した。だが、イヤではなかった。
「こっちこそ、ありがとう、陽介。俺、こんな風に心から繋がれる相手って、初めてかも」
「そっか?ははっ…」
 悠のセリフが嬉しくて、こそばゆくて、陽介は笑った。だが、悠は言葉を続ける。
「陽介にとって、俺が特別だ、って前に高台で言ってただろ?あれから今の今まで必死に陽介のことを自分がどう思っているのか考えたんだ。そしたら、答えはシンプルだった。今まで、こんなにも必死に相手のことを思ったことがないから、良く解らないけど、俺……」
ここで一度息を吸って、悠は寝転がったまま、顔だけ陽介の方を見た。
「俺にとっても、陽介は俺の特別だ」
 陽介は悠の言葉に、蓋をしようと思っていた自分の心が、激しく刺激されたのを自覚した。
 それはどういう意味か、と問う前に、陽介の腹の中から、何か熱いものがせりあがってきた。涙が知らずにあふれてきて、傷に触れて沁みた。
「いてててて…」
陽介が騒ぐと、悠はガバッと身体を起こして
「大丈夫か?」
と陽介の顔を覗き込んだ。と、その顔が見る見るうちに切なげにゆがんだ。
「陽介…」
悠の身体が、陽介に覆いかぶさってきて、陽介の身体は悠に抱きしめられていた。
 視界に広がっていた青空はすでに夕空になっていて、それが悠の顔で遮られたと思ったら、柔らかで温かな感触が陽介の唇に降ってきた。
 はっと陽介が気付いたときには、悠の顔が触れるほどに間近にあって。二人とも茫然としていた。
「何?今の」
「…解らない」



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という感じです。若いっていいですねえ(遠い目)
よろしければ、冬コミ当日うちのスペースにも足をお運びください。北海道のトドがもれなくご挨拶します。(笑)

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