Y2 プロポーズの日【創作】 忍者ブログ
テレビアニメペルソナ4第12話「It’s Not Empty At All」を見て、悠と陽介に腐ってしまいました。そんなネタでお送りします。BL要素がありますので、お嫌な方は入室しないでくださいね。
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今日、6月第1日曜日は「プロポーズの日」なんだそうです。(制定したのは、なんと、デザイナーの桂由美)
なので、当然、鳴花でやってみたく、ぐだぐだになったらごめんなさいです。
年齢制限はなし。二人は大学4年生です。




その日、テレビは朝のニュースで
「関東地方が梅雨入りしました」
と言い出したので、
「道理で最近、蒸し暑く感じるよな」
と言うと、相棒は
「ああ、そうだな」
と答えた。
ん?
何か変だ。
いつもあまり表情を変えない相棒だが、何かを押し殺しているような…。
もう3年2か月も一緒に生活しているのだから、大事な相棒のことは解るつもりだ。
気になり始めるとどうしても口に出さずにいられない。
「なんか、悠、変じゃねえ?」
と言うと、悠は微笑んだ。
「どうして?」
「だってよ、おまえ、その、何か上の空つうか、何か別のこと考えてるみたいに見えるんだもんよ」
俺は正直に言った。
だが、
「大丈夫。俺はいつも陽介のことばかり考えてるから。…もしかして気になった?ごめん、陽介」
と俺をまっすぐに見て言うと、急いでパンをほおばり、
「悪いけど今日実験があるから、もう行くから」
「ああ、俺は今日は講義午後からだから、後でな」
「行ってきます」
「いってらっしゃい」
あわただしく、悠は家を出て行った。
「なんか、誤魔化された気がする…」
俺は何か腑に落ちない気持ちが腹の奥に沈んだまま、立ち上がって朝食の後片付けを始めた。


相棒の様子が変なことが気になって、俺はそのあと、何も手につかなくなってしまった。
午前中は皿を洗っているときに、1枚手を滑らせて割ってしまうし、せめて洗濯だけでも、と思ったが、部屋干しするものだけできちんとするのが精いっぱい。
ベランダに干そうと出したシーツを、窓から落としてしまい、もう一回洗わなくちゃならなくなったり。
さんざんだった。
昼飯はトーストとヨーグルト、コーヒーと、なるべく手間をかけずに用意したが、トーストの上にヨーグルトをこぼしてしまって、しょうがないからそのまま食べたり、コーヒーは沸騰させすぎて苦くしてしまった。
バイクで大学に出かけたが、講義中も悠のことを考えてしまって、ちっとも頭に入らない。
困った。まじで。
付き合っていることはまだ全体的にも秘密だが、だから余計に、気になる。
もしかしてもしかすると、あと10か月でお互い大学を卒業するし、この生活も終わり、ってことか?
ぐちゃぐちゃといろいろな悪いことをイメージして、俺は頭を抱えた。
「花村くん、当たってるよ?」
と隣の席の同じ学部のヤツに言われて慌てて立ち上がると
「すみません!わかりません!!」
と叫んで、教授に失笑されるし。
「4年生なのに、こんなことが解らなくてどうするんだ?花村」
と言われて、周囲の学生に笑われて最悪だった。



授業が終わってやれやれと立ち上がった途端に、携帯が鳴って俺は慌てて取り上げた。
「悠?」
『陽介?講義終わっただろ?』
電話口から聞こえる相棒の声はいつもと同じトーンで。
こっちは朝に変だった悠のことで失敗続きなんですけど。
「ああ、終わったぜ」
『大学の正門に来てるんだ。一緒に帰ろう?』
珍しいこともあるもんだ。悠のほうが講義が多くて、しかも実習や実験が多いから、大抵は俺のほうが先に帰ることになる。
「わかった」
俺は務めて冷静に電話を切って歩き出す。
はたして、正門前に悠は佇んでいた。
そして、周囲になんとなく遠巻きに女子がたくさんいる。
きっと悠を見て逆ナンしたいが、って感じなんだろう。
「悠!」
と声をかけて駆け寄ると、悠も笑顔で手を振り返してくる。
そして、聞こえる女子の溜息。
なぜか、変な優越感が俺を襲った。
何だろう、この気持ち。
だが、悠がその前に俺を捕まえた。
「よし、一緒に帰ろう」
「ああ、バイク押しながらで良いか?」
バイク置き場からバイクを出して、二人並んで歩き出す。悠はちっとも周囲のことを気にも留めずにいる。
「おまえ、良かったのか?こんなところまで来て」
俺が問う。
「もちろん、陽介に会いに来たんだから、良いだろ?」
悠が答える。
「そっか…」
悠はいつも一番に俺を優先してくれる。
そのことは俺も解っている。申し訳ない気持ちもあるが、やっぱりうれしさが勝つ。
でも、本人を前にしても、朝方の変な様子が気になる。
今の悠はそれに比べると少しウキウキしているようにも見える。
「何か、良いことあった?」
俺がそう問いかけると、悠はびくっと動きを止めた。
「うん、あった、と言うか、これからある」
と言って、俺に向かってにっこりとほほ笑んだ。
悠の笑顔はとてもきれいで、俺はいつもドキドキするが、言っていることはやっぱりさっぱりだ。
俺は頭の上に大きな疑問符を浮かべながら、バイクを押し続けた。
二人の部屋に戻ってきた。
鍵を開けて先に中に入った悠は、
「陽介、早く入ってきて」
と手招きする。俺はきっと家の中に悠が気持ちを浮き立たせるものがあるのだと思い、中に入った。
「うわ、どうしたんだ?これ」
思わず俺は大きな声を出した。
二人でいつも食事をするテーブルには、大きなローストチキン、チーズリゾット、小さいけどケーキもある。
「誕生日…じゃないよな」
「うん、でも、記念日」
「???」
俺は首をかしげる。だが、思い出せない。
「悪い、なんだか思い出せない」
謝るが、悠は意に介さない。
「大丈夫。これから記念日になるから」
さっきから、『これからある』とか、『記念日になる』とか、よくわからないことを言う悠。
ただ、朝のあの様子は、このサプライズのことを考えていたんだな、と思い直した。
「じゃ、食べようか、陽介」
「ああ、うまそうだ」
二人で、チキンとリゾットで晩御飯。
「うめえ!これ、おまえが作ったのか?」
悠は嬉しそうに
「うん、実は授業午前だけだったんだ、だからちょうど陽介と入れ違いに帰ってきて、料理したんだよ」
と言った。悠が嬉しそうな顔をしたので、俺も嬉しくなって、たくさん食べた。
前々から悠の料理は旨かったが、今日は特別に旨いと感じる。
二人でにこにこしていられるこの時間が幸せだと感じる。
やがて、デザート以外は食べつくし、腹も膨れた。
「紅茶、入れるから、ケーキ、切ってくれないか?」
と言って、悠が席を立つ。
「おう、わかった」
俺もケーキナイフを使って、小さな、ホールのチーズケーキを切った。
すると、なぜか、すっとナイフが入らないところがある。
手作りだからか?よく混ざってないのか?それとも、ケーキの中に何か…。
「何だこれ?」
コツンと音を立ててナイフに当たったもの。小さい、ラップの塊。
「悠、おまえ、こんなミスするんだな」
と驚いてつまみ上げる。すると、紅茶を運んできた悠は笑って、
「もう見つかったのか?ラップ外してみて」
と言った。言われるままに俺はラップを外していく。悠の笑顔がいたずらっぽいものに変わる。
「あ」
中に入っていたのは指輪だった。銀色で、シンプルだが、とてもきれいだ。
「何、これ?」
悠に問う。悠は微笑んだ。
「陽介、これは婚約指輪」
「はあ?」
俺は口が半開きになったまま茫然とした。だが、悠は言葉をつづけた。
「一生、俺の隣に、いてくれませんか?」
「……」
反応ができないでいる俺の顔を悠は心配そうにのぞきこんできた。
「陽介?」
嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。だが…。
「良いのか?俺で」
思わず口にしていた。
「おまえなんて、黙ってうちの大学の正門で立ってるだけで、女の子の視線が集まっちまうくらいにモテるのに。」
悠は笑顔を崩さずに言った。
「うん、陽介が良い。他の誰でもない、陽介が良いんだ」
「悠…」
その言葉に、俺は体中の熱が顔に集まったかと思うくらい、顔が赤くなってしまった。
「はめてみて、あ、俺にはめさせてくれるか?」
悠はさっと俺の手から指輪を取り上げ、左手の薬指に差し込んだ。指輪はまるで測ったようにぴったりと俺の指に収まった。
「もしかして、これも作ったのか?」
俺は思わず尋ねた。
「ああ、さすがにそれは無理。陽介が寝ているうちにこっそり計測しました」
悠は悪びれもせずにっこりと笑う。
何もかも、この日このときのためだったのだ。
「これって…プロポーズ?」
恐る恐る口にする。口にしただけで、ますます顔が紅潮していくのが自分でも解る。
「うん、そうだよ。だから、今日は記念日。陽介と俺が婚約した日」
男同士とか、世間ではまだまだ認知されないとか、そのまえに両親を説得するとか、まだまだ山はありそうだけど、きっと悠となら越えて行けそうな気がするから、逆に怖い。
「陽介?返事は?」
悠が俺の顔を再び覗き込んだ。
その視線が熱い。でも、どこか自信のない揺らぎが見える。
それは俺がこう答えることで、消えるんだろう。
「俺、一生、悠のそばにいたい」
次の瞬間、今までで一番きれいな悠の笑顔が見られた。

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本当にプロポーズの日って今日らしいんです。
そして、5月23日はキスの日らしいんです。
まあ、そういうわけで、キスの日創作を逃したんで、プロポーズの日に合わせて創作してみました。
というか、ここにあげるの、4か月ぶりですか。ひどいですね。
もう少し更新、まめにします。



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